平成26年8月12日

追悼: 笹井 芳樹 博士

笹井さんは,これからの生命科学に,精密な計測に基づく定量性と数理科学的アプローチが必要となることにいち早く気づき,理研を横断してうねりとなる大きな活動の中心となり,またさまざまな提言を行って,生命動態システム科学に関する国の施策に大きく貢献してきました。幹細胞研究における第一人者であったことは言うまでもありませんが,広く発生生物学,細胞生物学のさまざまな問題に,新しい風を吹き込もうと努力し続けていました。「4D細胞計測」もその延長線上にあります。私が研究代表者を務めていますが,4D計測を極めるというアイディアを発案し,研究体制の骨子を描いたのは笹井さんに他なりませんでした。本プロジェクトを立ち上げる過程で,私たちは和光または神戸で何度も楽しく語り合いました。新しいアイディアを思いついたときに笹井さんがいつも見せていた,子供のような悪戯っぽい目を私は忘れることができません。科学者としての無垢な夢を語り合ったこともありました。このたび突如として笹井さんを失ったことは,私たちにとって衝撃であり痛恨に堪えません。「4D細胞計測」で共に目指した新しいサイエンスをしっかりと推進していくことが,残された私たちの使命であると思っています。笹井さんのご冥福を心からお祈りいたします。

(文責:「4D細胞計測」プロジェクト代表 中野 明彦)